アニサキスの予防には-20℃で24時間以上の冷凍が有効です(厚生労働省ホームページ抜粋)

アニサキスによる食中毒(アニサキス症)について

・アニサキスって何?
アニサキスは寄生虫(線虫)の一種です。
その幼虫(アニサキス幼虫)は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。
アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。
アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られています。
アニサキスによる食中毒はなぜ起こるの?
アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含みます)で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。

・アニサキスによる食中毒(アニサキス症)の症状は?
◆ 急性胃アニサキス症
食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じます。
◆ 急性腸アニサキス症
食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。
※ 多くが急性胃アニサキス症です。
※ 激しい腹痛があり、アニサキスによる食中毒が疑われる際は速やかに医療機関を受診してください。

・アニサキスによる食中毒の予防方法は?
まずは、鮮度を徹底!目視で確認!さらに、冷凍・加熱が有効!
消費者の皆さまへ
◆ 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 内臓を生で食べないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
事業者の皆さまへ
◆ 新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 魚の内臓を生で提供しないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
◆ 冷凍してください。 (-20℃で24時間以上冷凍)
◆ 加熱してください。(70℃以上、または60℃なら1分)
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。

・海外のアニサキス食中毒等の予防対策
◆ コーデックス(CAC/RCP52-2003)
中心部の加熱(60℃で1分)又は冷凍(-20℃で24時間)
◆ 米国(Fish and Fishery products Hazards and Control Guidance -4th Edition
生食用の魚は、-35 ℃以下で15時間以上又は -20℃以下で7日間以上等の冷凍
◆ EU(Regulation (EC) No 853/2004
生食用の魚介類は、-35℃で15時間以上又は-20℃で24時間以上の冷凍
過去3年間のアニサキスによる食中毒発生状況

・アニサキス食中毒に関するQ&A
アニサキス食中毒に関するQ&A
・関連ホームページ
国立感染症研究所 アニサキス症とは
内閣府食品安全委員会 ファクトシート「アニサキス症」
農林水産省 食中毒を起こす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑(アニサキス(寄生虫線虫類))
公益財団法人目黒寄生虫館

お問い合わせ先
医薬・生活衛生局 食品監視安全課
TEL:03-5253-1111(内線4244)

出典:厚生労働省ホームページ

アニサキス食中毒に関するQ&A

Q1. アニサキスとは何ですか?
A1.
アニサキスとは寄生虫(線虫)の一種です。その幼虫(アニサキス幼虫)は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。
アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類の主に内臓表面に寄生しています。
また、アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られています。
Q2. アニサキス食中毒とは何ですか?
A2.
アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含みます)で食べること起きる食中毒です。
Q3. 国内での発生はありますか?
A3.
刺身や寿司など生鮮魚介類の生食を嗜好する食習慣と強く関連することから、多数の症例が国内で発生しています。
→詳しくは発生状況を御覧ください。
Q4. アニサキス食中毒は新しい食中毒ですか?
A4.
アニサキス食中毒は以前からある食中毒で、2012年まではアニサキスも含めた寄生虫を原因とする食中毒は、食中毒統計では「その他」の項に分類されていましたが、2012年の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会において、アニサキス、クドア、サルコシスティスの寄生虫については、寄生虫性食中毒の独立項目として把握すべき旨の意見があり、2013年から食中毒統計において個別に集計しています。
05. どのようにして起きますか?
A5.
アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。
Q6. どのような症状ですか?
A6.
アニサキス幼虫が胃壁に刺入して生じる急性胃アニサキス症は、食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じます。
アニサキスの幼虫が腸壁に刺入して生じる急性腸アニサキス症は、食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。
その他、アニサキス幼虫が胃壁等に刺入しない場合でも、アニサキスが抗原となり、じんま疹やアナフィラキシーなどのアレルギー症状を示す場合があります。
Q7. 治療薬はありますか?
A7.
アニサキス幼虫に対する効果的な治療薬はありません。
なお、治療法に関しては、胃アニサキス症では胃内視鏡検査時に胃粘膜に穿入する虫体を摘出します。腸アニサキス症では対症療法を行い、場合によっては外科的処置が施されます。
また、アニサキスアレルギーに対しては、アレルギーに関する対処療法を行いますが、アナフィラキシーの場合、緊急に医療処置を行う必要があります。
Q8. どのように予防すればよいですか?
A8.
内臓に寄生する幼虫が漁獲後に筋肉へ移行することがあるため、魚を購入する際は新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除いてください。内臓を生で食べないでください。
また、魚が生きているときから既に筋肉内にアニサキスが寄生している場合もあるため、注意が必要です。
魚を調理する際には、目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
※一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
Q9. 生鮮魚介類を取り扱う事業者は、どのように予防すればいいですか?
A9.
まずは、新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除き、目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。なお、魚の内臓を生で提供しないでください。
また、アニサキスは冷凍や加熱で死滅するので、調理をする場合には、-20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上若しくは60℃の場合は1分加熱をしてください。
Q10. 飲食店や魚介類販売店で提供したものが原因で、アニサキス食中毒が発生した場合、飲食店や魚介類販売店には、どのような対応が行われますか?
A10.
食中毒やその疑いの連絡をうけた保健所は、直ちに患者への調査を開始すると同時に、食中毒の発生源と疑われる施設への立入調査を行います。立入調査の結果と、体調不良の患者への聞き取り調査の内容をもとに、食品衛生法第55条に基づき、被害拡大防止対策、再発防止対策が完了するために必要な期間・範囲で営業停止の行政処分がとられることがあります。
Q11. 飲食店や魚介類販売店で提供したものが原因で、アニサキス食中毒が発生した場合の、行政処分がとられる被害拡大防止対策、再発防止対策が完了するために必要な期間・範囲とは具体的に何ですか?
A11.
行政処分については、都道府県等が定める規定に基づき運用されていますが、厚生労働省としては、アニサキス食中毒における行政処分に必要な期間とは、従業員教育等の再発防止措置に必要な期間で、必要な範囲とは、対象品目を鮮魚介類(冷凍品を除く。)に限定する等と考えています。
都道府県等ごとに営業許可の停止期間が異なっていたことや、従業員教育等の再発防止に必要な期間に関係なく一定の停止期間が設定されていた事例等を踏まえ、都道府県等に対し、「平成30年度食品、添加物等の年末一斉取り締まりの実施について」(平成30年11月19日付け生食発第3号)や平成30年度全国生活衛生・食品安全関係主管課長会議において、アニサキス食中毒における行政処分について合理的な処分内容とするよう要請をしています。
Q12. 飲食店や魚介類販売店で提供したものが原因で、食中毒が発生した場合、飲食店や魚介類販売店は公表されますか?
A12.
食品衛生法第63条の規定により、食品衛生法違反者等の情報は、食品衛生上の危害の発生防止の観点から、公表される場合があります。
Q13. 平成30年にアニサキス食中毒が多く報告された原因は何ですか?
A13.
平成30年にアニサキス食中毒が多く報告された原因を調査するため、平成30年度に「カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因の調査と予防対策の確立のための研究について」(概要)を実施しました。これまでカツオによるアニサキス食中毒の報告は少数でしたが、調査により、平成30年に漁獲されたカツオには、例年よりも海水温が高い状況が続き、海水温が例年並みに低下しなかったこと、漁獲海域が例年とは異なっていたことなどにより、多くのアニサキスが寄生したことが、平成30年の食中毒報告件数の増加の要因となったと推測されています。
令和元年10月23日時点(速報値)では、アニサキス食中毒の報告数は142件であり、10月末までに425件の報告があった平成30年と比較すると大幅に減少し、例年並みの報告数となっていますが、引き続きQA.8に示す予防対策を行っていくことが有効です。

カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因 の調査と予防策の確立のための研究について(概要)≪抜粋≫

カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因 の調査と予防策の確立のための研究について(概要)≪抜粋≫

【研究目的】
1.2018 年のカツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因を明らかにする。
2.カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の予防策を検討し、関係者に注意喚 起等を行う。

【研究内容】
① 漁獲直後(30 尾)、水揚げ後(30 尾)、流通後(30 尾)の各段階におけるカツオ のアニサキスの寄生状況(検出種、検出率、寄生部位等)の実態調査
② カツオの漁獲海域、時期、生育環境、漁獲後の取扱い等について、漁業関係者、 国立研究開発法人水産研究・教育機構国際水産資源研究所(以下、国際水産資源研 究所)の専門家等からヒアリング
③ 漁獲後のカツオについて、内臓除去のタイミング、調理時に留意すべき事項を含 めた衛生管理の実態について、魚介類販売業、飲食店営業等からのアンケート調査 等

【研究結果】
① 2018 年8月~11 月に漁獲されたカツオについて検査をしたところ、各段階のカ ツオの腹側筋肉からアニサキスが検出された。また、検出されたアニサキスはカツ オの組織に被包された状態であったことから、アニサキスは生存時に腹側筋肉に 寄生していたことが判明した。なお、背側筋肉からアニサキスは検出されていない。 アニサキスの内臓寄生数が多いと腹側筋肉寄生数も多い傾向が認められた。ま た、顕微鏡を用いた形態学的な分類やPCR法などの遺伝子解析による虫種同定 の結果、腹側筋肉から検出されたアニサキスは全て Anisakis simplex sensu stricto (As)であった。 また、2018 年東京都内で発生したアニサキス食中毒のうち、カツオを喫食した 事例は 23 事例全てが As と同定されており、この虫種同定結果と一致した。
② 国際水産資源研究所から、カツオは豊富な餌場を求めて、海水温の上昇とともに 日本近海に接近するが、その回遊経路は黒潮の流れにも大きく影響を受けるとの 情報を得た。また、2017 年9月以降、黒潮の大蛇行が観察されており、伊豆諸島周 辺海域では例年よりも海水温が高い状況が続き、海水温が低下しなかったことが 判明した。 漁業関係者へのヒアリングによれば、2018 年4月は例年と異なり、伊豆諸島三 宅島周辺にカツオの大きな漁場が形成されており、同海域で漁獲されたカツオは 例年同期のものより脂ののりが良く、アニサキスの中間宿主であるオキアミや待 機宿主であるカタクチイワシ等を長期間捕食していた可能性が高いと考えられた。
また、卸業者へのヒアリングによると、漁獲から販売までカツオは低温で管理されており、アニサキスが内臓から筋肉に移行する可能性はきわめて低いと考えられた。
③ 魚介類販売店等で行われているアニサキス食中毒の対策についてアンケートや ヒアリングを実施したところ、2018 年4月から5月にアニサキス食中毒事例が急 増して以降、関係者は様々な対策をとっていた。目視による確認や冷凍処理等の厚 生労働省が周知するアニサキス対策が行われていたが、冷蔵庫内で冷却すると筋 肉中からアニサキスが出てくるという「冷やし込み」や包丁等で切れ目を入れアニ サキスを殺傷するといった科学的根拠が明らかとなっていない又はリスク低下の 程度が不明な対策が行われている場合もあることが判明した。

【考察】
カツオの As 相対寄生数が 2012 年~2016 年より 2018 年が多く、アニサキスの内 臓寄生数が多いと腹側筋肉寄生数も多い傾向が認められたことから、2018 年のカツ オの筋肉には例年より As が多数寄生していたと考えられた。これが 2018 年の食中 毒報告数増加の要因になったと推測された。 そして、関係者からのヒアリングから、例年よりもカツオに多くのアニサキスが 寄生していた要因として、以下のことが推測された。
● 2017 年9月以降、黒潮の大蛇行が観察され、伊豆諸島周辺海域では例年より も海水温が高い状況が続き、海水温が例年並みに低下しなかったため、2018 年漁期のカツオは伊豆諸島近海で 2017 年から 2018 年にかけて越冬もしくは 2月、3月といった早い段階で北上した。
● これにより、2018 年のカツオは例年と異なる海域に長期間生息し漁場を形成 していた。
● その間、カツオはアニサキスの中間宿主であるオキアミや待機宿主であるカ タクチイワシ等を大量に捕食し、多数のアニサキスが寄生した。

2018 年のカツオの生食によるアニサキス食中毒急増は異常であった可能性があ る。また、2018 年8月以降、カツオを原因としたアニサキス食中毒の報告数が増加 しなかったのは、カツオの取扱いが慎重になったことや、As 相対寄生数が5月と比 較し小さくなったことが要因の可能性がある。 なお、アニサキスの内臓寄生が多いと腹側筋肉の寄生数が多い傾向にあったこと から、内臓における寄生数が多い場合には注意喚起を行うとともに、引き続きアニ サキス対策を実施することが重要である。

【研究者】
(公財)目黒寄生虫館 館長 小川 和夫
東京都健康安全研究センター 微生物部食品微生物研究科長 鈴木 淳
国立感染症研究所 寄生動物部 主任研究官 杉山 広

(リンク)
カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因 の調査と予防策の確立のための研究について(概要)

指導部 平原